メガドライブ ソフト評005 「新創世記 ラグナセンティ」

第5弾は当時SEGAが展開していた「メガドラ ロープレプロジェクト」(RPGに弱いと言われていたメガドライブに高品質RPGを提供しよう!という試みだった)第一弾の「新創世記 ラグナセンティ」。
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非常にオーソドックスなアクションRPG。難度は低い。Aボタンによる攻撃・Bボタンによるジャンプの他に、Cボタンで仲間にした動物によるアクションが行える。動物は同時に2匹までアクティブにする事が可能で、その組み合わせにより効果が変化する。移動は滑らかな縦横斜めの8方向移動でキャラクターの書き込みも丁寧で移動とそれに伴うスクロールもスムーズ。キーコンフィグによるボタン配置の変更はできない。セーブ本数は最大4本。基本的にボス戦時等の一部を除き、いつでもどこでもセーブ可能。経験値の概念はなく、ヒットポイントは世界中のあちこちに隠された(実は隠れてもいない)ハートの器を獲得することで増える。通貨が存在し物品売買の概念はあるが、その必要性は極めて薄い。ストーリー進行に必要なアイテムは冒険の中で自然と入手していくが、それも点数にして10点ほどしかない。大まかな移動はワールドマップ上で行う。また一度行った事がある場所へは、マップ上のみで移動が可能になる。この為、ストーリー展開上、同じ場所を何度か通過するものの、その度にクリア済みのステージを雑魚キャラ相手にこなす必要は避けられている。会話の文字表示はウィンドウ状で出現や消失もスムーズだが、白いフォント色に黒の縁取りが有るもののそれでも背景等に紛れて読みづらい。漢字表記も中途半端で違和感があるものの、コンシューマーハードの全年齢対応RPGと言う事で、小中学生が読解できる範囲に収めたのだとすれば納得できる。
当時任天堂のスーパーファミコンで人気だった某ゲームと画面の雰囲気が非常に似ていた事もあり、メガドライバー間では「SEGAが言う”対抗”とは同じ開発ツールの導入だけか?」や「オリジナリティに疑問は感じるがそれでもメガドライブでこの様なゲームが出来るのは嬉しい」等賛否あった。

ストーリーはドラクエ以降に見られる、いにしえのRPGその物で、今となっては噴飯ものの「主人公がある年齢に達すると冒険の旅に出ることに…」。主人公の年齢以下か、それに近くないと感情移入は難しい。物語を進めてもストーリーに奥深さは感じられない。ネタバレになるので多くは語らないが、実際のマップ面積や登場キャラクタ数も含め、狭く・薄い。
剣を振るうアクションRPGでモンスターを敵対視する世界観にあって、それを感じさせない殺傷性が低い感覚は、良くも悪くも全年齢対応ゲーム。
展開自体は練った部分もあるものの、盛り上がりに欠け、肝心な所を放り投げられている様な舌っ足らずな印象が残るストーリー展開。ストーリー自体もクリアすると”夢オチ”に近いガッカリ感が残る。低年齢層への配慮が行き過ぎたのか、口に出来る分は全て言葉で解説してしまい、プレイヤーに想像する余地を全く与えなかったのも失敗と思う。
冒険の途中で仲間になる様々な動物(と言うか一部モンスターじゃないか?)の種族名は良いとしても、押しつけがましく宛がわれる愛称や、ゲーム全般を通して漂う言葉使いにも古臭いと言うかオタク臭いと言うか、悪い意味で微妙なニュアンスを受ける。特に仲間動物の愛称は、プレイヤーが考えるなら良いが、勝手に設定されては感情移入も出来たもんじゃなく、ゲームシステムとしても必要性がなく、なぜ設定したのか意味不明だ。
キャラクターの動きも良く、操作性も良好なのに、コリジョン(各オブジェクトやアクションの当たり判定)の設定が微妙で気持ち良くプレイできない。特に主人公の攻撃アクションがどの程度の距離・角度で敵にヒットするか?と地形トラップの落下判定はクリアし終わっても違和感が取れない。また仲間動物能力の駆使はクリアに必須だが、Cボタンによる防御サポートの必要性は皆無に等しい。冒頭に記した通りボタン配置は変更できないくせに、通常のプレイスタイルではAボタンによる攻撃アクションがトリガ操作の中心となる為、とっさにCボタンは操作しづらく実用性がない。ロムカートリッジなのに建物への入退出時等、場面の切り替えに一瞬のタイムラグがあるのが気になる。

散々ダメ出ししたが、作りこみは悪くない。特に画面の雰囲気は、たとえスーファミに日和見過ぎててオリジナリティに欠けるとは言え、恐らく製作者側に「スーファミ人気作のような雰囲気を」との意図があったのだろうから、そう言う思惑があったとしたら目的は見事に達成出来ている。但し、なまじ雰囲気を似せてしまったが為に、ハードのスペック差(画面同時発色数がスーファミの128色に対しメガドラ64色)がより一層、如実に感じ取れてしまったのが難点。特に同一カ所で天候を変化させた場面があるが、オブジェクトの色調を単純に変化させたが為に、地形を判別出来ない様な表示があったのは大きな減点だ。とは言えソフト上の工夫による疑似半透明表示の雲の影、中盤イベントで見られる竜巻の表現、各ボス戦時の画面効果には、プログラマーの奮闘と地力が垣間見える。だが、こう言う事を気取って口にするオタクやマニア以外にはプレイヤーへの障害にしかなっていない。
音楽も良い。音色も綺麗だし、効果音が多くなると割と容易に音が抜ける事から、スペックを使い切ってる感もありプレイしてて気持ちが良い。但し曲自体は良くも悪くもなく、全く印象に残らない。
キャラクターデザインは女性的。各キャラクターのまさにキャラクター(性格)表現部分は全く希薄で個性やバックボーンが感じられないが、これは先にに述べた様な文言の問題もある。唯一のライバルキャラがクリア時になってクスッとさせるのと、某所にいる下ネタキャラが、時を経るごとに切迫度を増すのが笑いどころ。

何度も全年齢であることを記したが、総合的に鑑みると中学2年生までにならお勧めできる。それ以上の年齢層だとボリューム不足。高校生以上なら丁寧にプレイしても1週間でじゅうぶんエンディングに到達出来る。何度もプレイし直そうと思わせる奥深さもなく、満足感は薄いのが残念。んじゃ。

C-Low について

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メガドライブ ソフト評005 「新創世記 ラグナセンティ」 への2件のフィードバック

  1. 匿名 より:

    子供向けの作品は大人でも楽しめますよ。
    変に凝った設定やストーリーは高校〜大学生受けはしますが、大人が見るにはキツイです。

    ラグナセンティは大人にこそ遊んで欲しい名作ですね。子供にも分かりやすい世界観ながら、異文化との共存のようなテーマ性も感じられて見応えがあります。

    • C-Low より:

      コメントありがとうございます

      >変に凝った設定やストーリーは高校〜大学生受けはしますが、大人が見るにはキツイです。
      俗に言う”中二病”な要素は大人だとキツいですね
      とは言え最近のゲームはあえて中二病な要素を全開にし
      それをウリにしたものがウケてもいるように見受けられます
      私の感覚は既にオールドタイプの様です

      本作は悪くないのですが、10代後半以上の年齢層がプレイするにはあまりにボリューム不足と思いました
      キャラクタへの感情移入や世界観へ入り込む前に終わってしまう印象です
      大人でも楽しめる事には同意しますが、項数の少ない良作絵本と言った印象に留まります

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